完全閉鎖系iPS細胞自動作製装置を用いたiPS細胞自動量産技術の実用化

I Peace, Inc.(米国カリフォルニア州パロアルト、CEO:田邊剛士)は、この度クリニカルグレードで多数のドナー由来のiPS細胞を同時に作製する技術の開発・実用化に成功いたしました。こちらの自動化技術はファナック株式会社(本社:日本国山梨県忍野村、CEO:山口賢治)との共同開発により実現されたものです。

ポイント

  • 完全閉鎖系のiPS細胞自動作製装置である。
  • 装置外で作製したiPS細胞を単に増やすだけではなく、iPS細胞作製の全工程を完全閉鎖系の中で完結する装置である。つまり、血液を入れればクリニカルグレードのiPS細胞が出来る装置である。
  • 省スペースで、装置を集積させることができ、クリニカルグレードのiPS細胞を量産できる。
  • 多数のドナー由来のiPS細胞を同時に作製することを可能にする。
  • iPS細胞のコスト削減に大きく貢献する成果である。
  • 限られた機関でしか実施出来なかったiPS細胞を使った自家移植の臨床研究を、より多くの企業や研究機関で行うことを可能にすることで、iPS細胞を使った自家移植の実現を促進する成果である。
  • クリニカルグレードのiPS細胞株の選択肢を増やすことでiPS細胞を用いた他家移植の臨床研究をより促進する成果である。


完全閉鎖系iPS細胞自動作製装置の開発の背景
iPS細胞により夢の医療が実現する、といわれてきました。様々な臨床研究が行われており、その可能性の広がりも現実味を帯びてきました。その一方で、従来のiPS細胞作製方法はクリーンルーム内での人の手による作業に依存しており、生産効率が低くそのコストは膨大なもので、誰もが利用できる医療とするための大きな障壁となっていました。

これまで、クリニカルグレードiPS細胞の作製にはクリーンルームを一人分のために長期間占有する必要があり、量産は実質的に困難でその経費は膨大なものでした。したがって、複数のドナーのiPS細胞を効率的に量産することは非常に難しく、その解決が課題でした。そのためクリニカルグレードのiPS細胞は限られた数の細胞株しかなく、コストが非常に高く、普及のための障壁となっていました。


本装置の特徴
今回開発に成功した完全閉鎖系iPS細胞自動作製装置は、iPS細胞自動培養装置のように装置外で作製したiPS細胞を入れて単に拡大培養するのみならず、血液からiPS細胞を作製するまでの一連の全作製工程を、閉鎖系のコンパクトな装置の中で行うものです。つまり、血液を装置に入れればクリニカルグレードのiPS細胞が出来上がり、さらに拡大培養するという装置です。この装置は注1クロスコンタミネーションや外側からの汚染物によるコンタミネーションのリスクがなく、これを複数並列して運用すれば、一つの部屋で同時に多数のドナー由来のiPS細胞をクリニカルグレードで量産することが可能です。これにより、現在枯渇しているクリニカルグレードのiPS細胞を、多くのドナーからの血液を元に同時に同じ部屋で作製することが可能になります。また、非常にコンパクトな装置なため、小さなスペースで多数のiPS細胞株を同時に大量に作製することが可能となります。施設内の運用に関しても、ファナック株式会社との共同開発により、ロボットを用いた自動運用システムを完成することができました。この事により、十分な種類のクリニカルグレードのiPS細胞をスムーズに研究者や医療機関に提供する事ができ、臨床研究の実施機関は自分たちの臨床研究に最適なiPS細胞株を選択することが出来ます。その結果、iPS細胞を用いた臨床研究の加速に大きな貢献をすることができると考えます。さらには、このシステムを用いてiPS細胞を多品種同時に作製することにより、個人用iPS細胞の量産も可能となり、さらには研究用のiPS細胞作製効率も飛躍的に向上させることができます。これまで、限られた数の疾患特異的iPS細胞株を用いて創薬研究がなされてきましたが、数多くの有疾患者と健常者のiPS細胞を同時に並行して作製し、比較することができるようになり、iPS細胞を用いた創薬研究を飛躍的に促進することができるのではないかと考えております。

I Peace, Inc. はPeace of mind with iPSCという理念の下、iPS細胞医療が誰の手にも届く世界の実現のために力を注いできました。今回の完全閉鎖系iPS細胞自動作製装置の完成は、iPS細胞の量産とコストの劇的な削減を可能とし、iPS細胞が誰の手にも届くようにするための大きな一歩だと確信しています。再生医療や新薬の開発など、iPS細胞を活用した様々な研究が進められていることから、今後iPS細胞の需要はさらに増大すると見込まれます。医療用、創薬研究用、治験用など今後見込まれる様々なiPS細胞需要に対応するため、年内の体制確立に向け設備増強に取り掛かっています。

全ての人が当然のように自分のiPS細胞を持つことができる未来を一日も早く実現するため、全社挙げて取り組んでまいります。

注1 クロスコンタミネーション
培養する細胞株が2つ以上ある場合や製造工程が複数ある場合に、複数の細胞株が混じること。


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