パーキンソン病患者由来のiPS細胞から作製した神経細胞の自家移植で症状が改善

米ハーバード大学医学部の付属病院McLean Hospital とMassachusetts General Hospitalの研究チームは5月14日、パーキンソン病患者由来のiPS細胞から作製したドーパミン神経前駆細胞を、患者に移植した臨床研究の経過について米科学誌The New England Journal of Medicineに報告しました。

ポイント

  • 10年間進行性パーキンソン病に罹患している69歳の男性に対し、患者自身の細胞から作製したiPS細胞をドーパミン作動性神経前駆細胞に分化させて、2度にわたって中脳に移植した。
  • 治療の過程で免疫抑制は使用しなかった。
  • 2つの移植片が標的部位に移植され、最初の手術後24か月、および二度目の手術後18か月間、生存したことが示唆された。
  • 移植後18〜24か月間で臨床的変化が徐々に現れ、パーキンソン病治療薬の1日当たりの使用量は6%減少した。
  • 運動障害やその他の神経系への悪影響は観られず、患者からも報告されていない。

手術から2年後に行われた画像検査では、移植された細胞は生存しており、脳内でドーパミン作動性ニューロンとして正しく機能していることが示されています。移植した細胞は患者本人由来の細胞であるため、免疫拒絶反応を引き起こさず、免疫抑制剤がなくとも拒絶されませんでした。上級著者であるKwang-Soo Kim博士は以下のように述べています。「リプログラムした細胞が移植後も依然として患者の免疫系によって自己として認識され、拒絶されないことを初めてこの研究で示しました。」「これらの結果は、このパーソナライズされた細胞置換療法が技術的に成功したことを示しており、細胞は意図した通り生存および機能しています。患者は副作用を引き起こしておらず、移植した細胞が望ましくない成長や腫瘍化を引き起こした兆候もありません。

患者によると、手術後は日々の生活の質が改善されたとのこと。靴紐を結ぶ、歩幅を上げて歩く、はっきりとした声で話すなどの日常的な活動が再び可能になったようです。今では、水泳、スキー、サイクリングなど彼が数年前に諦めた活動のいくつかが彼の日常に戻っています。しかし、症例数がこの一例に限られているため、この治療法が実現可能かどうかを判断するには時期尚早です。著者らは、引き続き正式な臨床試験でこの治療法の効果を確認することを目標としています。

「現在のパーキンソン病の薬物療法と外科治療は、ドーパミン作動性ニューロンの喪失に起因する症状に対処することを目的としていますが、私たちの戦略は、それらのニューロンを直接置き換えることでさらに先へ行こうとしています」とKim氏は述べています。

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